取り組みの概要
AIを使う人を増やすには、身近な仕事で試し、周囲に伝えられるアンバサダーが必要です。
このAIエージェント徹底訓練プログラムでは、1人10件のエージェント作成というゴールを設定して3か月間取り組みました。
結果として、20名全員が達成。チーム全体では、目標200件に対して276件のAIエージェントが誕生しました。
なぜ実践の「量」にこだわったのか。ゲーミフィケーションをどう組み込んだのか。
講師・企画運営を担当した阿部が、設計の意図と実施後の変化を振り返ります。
目指したのは、各部署でAI活用を広げる人
—— このプログラムでは、どのような人を育てようとしたのでしょうか。
阿部:
自分の仕事でAIを使い、周りの人にも使い方を伝えられる人です。機能を知っているだけでなく、「この業務なら使えそう」と題材を見つけ、まず自分で試せることを大切にしました。
参加したのは20名。3か月・全12回の講義と演習に、1on1、ユニットでの活動、成果発表を組み合わせています。
AIエージェントを作るには、自分の仕事を分解し、どこをAIに任せるかを決める必要があります。作る過程で各部署の業務が見えるようになり、担当者が頭の中で暗黙的に判断していたことを、指示やルールとして取り出せます。
これからのAI時代、散らばった情報や判断基準を構造的に整理しておくことは、どの部署にも欠かせません。その取り組みを現場から進める手段として、AIエージェントを作ることが大事だと考えています。
実際の教材:プログラムキックオフ
量を打つ。数をこなすことが、身体知になる
—— 1人10件という目標を置いたのは、なぜですか。
阿部:
量を打たなければ、身につかないからです。説明を聞いて1つ作っただけでは、自分の仕事で使えるところまで届きません。
また、1つのエージェントをじっくり磨いていると、成功の型を1つしか知らないままになります。
10個作り切れば、すぐ使える型が手札に増え、詰まっても次がある。失敗も学びに変わります。
題材を変え、出力を確かめ、指示を直す。この往復を何度も繰り返すうちに、「こう頼めばよい」「ここは人が判断する」が体でわかるようになります。
数をこなすことが、そのまま身体知になる。
「量で成功体験を積む」と、受講者に繰り返し伝えていました。
実際の教材:量で成功体験を積む
教材は、お手本をまねて、その場で作る
—— 量を打つために、講義はどう組み立てたのですか。
阿部:
説明を聞く時間を短くし、講義の中で手を動かすことを大事にしました。毎回、業務ですぐ使えるお手本エージェントとプロンプトを用意します。まず同じものを作って動かし、次に「自分ならどうするか」を考え、自分の業務に置き換えて作る。
講義中に7割を作り、残りを宿題で仕上げます。
最初から一人で考えてもらうと、題材選びで手が止まります。お手本があるから、迷わず作り始められる。教材で学び、お手本をまね、実習で作る。
この3つを毎回セットで回したことが、量を支える土台になりました。
実際の教材:お手本から学び、その場で作る
続けたくなる仕掛けを、訓練の中に入れる
—— 通常業務をしながら、作り続けるのは大変ですよね。
阿部:
はい。量を求めるなら、続けられるように支える必要があります。そこで使ったのが、ラグビーをモチーフにしたゲーミフィケーションです。受講者20名が一つのチームとしてシーズンに挑み、エージェントを1つ提出するたびに「トライ」が決まります。
目標は1人10トライ、チームで200トライ。会員サイトでは、チームの累計、節ごとのトライ数、ユニット対抗の順位、個人のランキングをいつでも見られます。自分の提出がチームの前進になり、仲間の提出が自分の背中を押す設計です。
毎節、会員サイトで「週刊ラグビーNEWS」を発行し、その週のトライやファインプレーを紹介しました。取り組んだことが見え、仲間から反応が返り、もう一度作るきっかけが生まれる。この流れを、日々の運営と一緒につくりました。
実際の教材:ラグビーをテーマにしたゲーミフィケーション
「正直しんどい」。それでも、全員が作り切った
—— 1人10件は、受講者にとって大変ではありませんでしたか。
阿部:
大変だったと思います。終了時のアンケートでも、通常業務との両立がしんどかった、課題が多かったという声は率直に出ています。
それでも20名全員が目標を達成しました。
少し心配になって、受講者の方にプログラムの懇親会で「きつかったんじゃないですか」と毎回訊ねていました...(笑)
ただ返ってきたのは、「きついけど、今はAIを使ってアウトプットをするのが楽しい」という声ばかりでした。どうやったらもっとAIを使いこなせるのか、と質問をたくさん受けました。
きつさの先に「作るほど敷居が下がる」「磨き込むのが楽しくなった」という手応えがあったことがわかります。量を求める設計は、受講者に負荷をかけます。
だからこそ、仲間やゲーミフィケーションで続けられる環境を用意することが欠かせません。
受講者の声|大変さと、その先の手応え
しんどさ以上に、学びが多かった
最初は、3ヶ月集中プログラムなので最後までやっていけるか不安が大きかったです。ですが、始まってみると、毎講義わかりやすく、お題を実践しながら少しずつAIエージェントの理解が深まることを実感しました。通常業務をやりながらだったので正直しんどい部分もありましたが、それ以上に学びが多い3ヶ月でした。
苦行の先に、ブレイクスルー
エージェントが何かも分からないまま、序盤の3Sをひたすらエクセルシートにまとめる作業が苦行でした。途中から、エージェント作成を支援するエージェントというのを自分で作れたのが、ブレイクスルーになったと感じています。
磨き込むのが、楽しくなった
課題が多かったり、エージェントを磨きこむのが楽しくなってしまって難しいと感じることもあった。かなり力になったと思います。
ユニットが、思いのほか盛り上がった
—— ランキング以外には、どんな支援をしましたか。
阿部:
4人1組のユニットを5つつくり、講義中のグループワークに加えて、ユニットごとのTeamsチャネルで相談できるようにしました。初月には一人ずつ1on1を行い、自分の業務で何を作るかを講師と一緒に整理しています。
ユニットは、思いのほか盛り上がりました。チーム名を自分たちで決めた週から発言が一気に増えました。
作ったエージェントを見せ合い、もらった意見をその日のうちに反映する。仲間のエージェントを自部署で紹介する。締め切り前には、あと少しの仲間に「手伝えることがあったら言ってくださいね」と声をかける。競い合うだけでなく、応援し合う関係ができていました。
実際の教材:4人1組のユニットで進める
後半は、他の人に使ってもらう
—— 「アンバサダーを育てる」ために、後半で重視したことはありますか。
阿部:
まず、どんどん作ってもらうことです。10件の目標を超えても作り続ける人が多く、20名中13名が10件を超えて提出しました。
そのうえで、作ったエージェントを他の人が使える形にする練習をしました。たとえば、使い始める人のために、最初に表示する質問例(推奨プロンプト)を用意すること。本人には分かる使い方も、別の人には伝わらないことがあります。
実際の教材:使い始める人への配慮を学ぶ
2人組体験会。その場で使ってもらい、フィードバックを得る
—— 他の人に使ってもらう場は、どのようにつくったのですか。
阿部:
プログラムの最終月に「2人組体験会」を開きました。
説明は最小限にして、90分のうち60分を体験に充てています。ペアの相手が自分のエージェントを実際に使い、つまずいた場所をその場でフィードバックする。本人では気づけない崩れた場所が見え、直す場所がはっきりします。
自分が使えて終わるのではなく、目の前の同僚に使ってもらい、反応を受け取る。
ワークショップ形式でこの経験を積むことが、各部署で広げる人を育てる近道だと考えています。
実際の教材:2人組体験会
1人10件を全員が達成。チームで276件
—— 3か月を終えて、どんな変化が見られましたか。
阿部:
1人10件のゴールを20名全員が達成し、チーム全体では目標200件に対して276件、達成率138%でした。
受講前後のアンケートでは、全員が個人の業務ではなくチームの業務を変える水準に達していました。
作る力が、3か月で確実に積み上がりました。
実施記録とアンケートで確認した変化
チーム全体のエージェント提出
目標200件に対して138%。
全員が1人10件のゴールを達成
受講者20名の全員。うち13名は10件を超えて提出。
目標水準に到達(受講前は4名)
個人の業務ではなくチームの業務を変える水準。受講前後のアンケート(共通回答者20名)で判定。
実際の会員サイト:個人トライランキング
受講者の声
作りたいものを、形にできるようになった
3か月前はエージェントって何?という状態だったのが、今では作りたいエージェントをある程度自由に作れるようになった変化に自分自身が一番驚いています。
仕事への取り組み方が、激変した
…AIエージェントを作る作業は、そのままAIの特性を理解する事になり、結果、自分の日々の業務の中のアレコレにAIを使う切っ掛けとなり、参加前後で大きく、仕事への取組み方、時間の使い方が激変しました。
やさぐれている場合ではない!
最近、年齢のことなどもあってちょっとやさぐれているところがありました。…今回の研修を受講することができ、より業務に役立てられるというところを強く感じやさぐれている場合ではない!(笑)とようやく少し火が付きました。
一人で悩んでいる人におすすめ
この研修は、個々の挑戦に見えて、実際には参加者同士で知恵やアイデアを出し合いながら業務へのAI活用を考えられるので、「自分の業務のどこにAIを活用できるだろう」と一人で悩んでいる人におすすめ!
上司が見た変化。広げる人が、部署のキーマンに
—— 上司の方からは、どんな声が届いていますか。
阿部:
終了時の上司アンケートでは、20名中18名の上司が「変化を感じる」と答えています。最も多かった変化は「周囲にAIの使い方を教える・勧める」で、13名でした。AIに任せることを周りに勧める発言が増えた、他の担当へ自分から課題を聞きに行くようになったなど、仕事の進め方そのものが変わったという声が目立ちます。
作ったエージェントは、20名中10名の部署ですでに使われ始めています。うち5名の部署では、複数のメンバーが使っています。部署で広げている人たちは、研修の期間中から自分のエージェントをチームに紹介し、すぐに業務へ組み込んでいました。
作る経験を重ね、周りに使ってもらうところまで進んだ人が、各部署でAI活用のキーマンになりつつあります。
実際の教材:成果発表会は、自部署への展開につなげる場
上司の声
他の担当へ、自分から聞きに行く
自主的に、他担当へAIエージェントで、課題解決できるかどうかヒヤリングする姿勢がみえた。
改善活動に、大きく寄与
業務の中でも現行のAIをよく理解し、改善活動に大きく寄与しています。今後もチーム全体のAIによる業務改善の推進に期待しています。
このプログラムについて
講師・企画運営 阿部将大より
Copilotのアカウントを全社に配ったのに、使う人が広がらない。そんな課題を感じている方に、このプログラムをおすすめします。
勉強会を開くだけ、「使ってみましょう」と呼びかけるだけでは、現場でAIは使われません。必要なのは、お手本を見てまね、量を打ち、知見が体に染みつくまで徹底的に訓練することです。身体知になって初めて、自分の業務で使いこなし、周りにも勧められるようになります。
うねりは、その訓練を支える仕組みを開発しています。業務ですぐ使えるお手本エージェントと教材、続けたくなるゲーミフィケーション、仲間と学ぶユニット、その場で使ってもらう2人組体験会。どれも、量を打ち続けるための仕組みです。
各現場に本当のアンバサダーをつくり、その人たち自身がAI活用を進めていく。そんな組織を目指すなら、AIエージェント徹底訓練プログラムをおすすめします。
